新・日々の暮らしに疲れてない?

一人バンド、火頭工房

Web Audio API 布教活動。

少し前に見た音楽関係の記事にグレン・グールドのインタビューが抜粋されていました。この記事ですね。

ASCII.jp:なぜ音楽は無料が当たり前になってしまったのか (5/5)|高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み

 

~将来、リスナーが自分の好きな演奏を組み合わせて、自分だけのベスト版を完成させるような時代になる、自分はそういうことに取り組みたい~ ということを語ったようです。詳しくは上のページでご確認ください。

 

クラシックの奏者が聞けば激怒しそうな内容ですが、グールドに言われちゃ文句も言えないでしょう。グールドは同じ曲を何パターンも弾き分けて録音し、それらをツギハギして一曲を仕上げる手法を試みていました。自分の耳を頼りにベストな録音を紡ぐ行為を延々と繰り返したグールドですが、それはリスナーが自分でやる時代になるだろう、という予言です。

 

楽曲をCDに落とし込む、というのが大前提の考え方では、混ざってしまった音を「後から組み合わせる」ということは出来ません、パートの分離処理がまず無理です。また気に入った部分をPCに取り込み波形をつないで一曲として編集したとしても、作り手側がそういう行為を意識していないと、やはり自然には聴こえないと思えます。

 

かといって同じ曲のパターンA、パターンB、パターンC、を用意してあげる、ということも非現実的。(どこぞの歌手が全て同じ曲のアルバムを作っていましたが)

 

しかし、ようやくこれらが可能な世界になりつつあります。
そう、Web Audio APIならね。

 

私が手がけているこちらのサイトは 火頭工房 Hiatama Workshop まさにグールドが取り組みたかったことと似た発想です。リスナーが自分の好みで、楽器ごとの音量を決めることが出来、楽器の位置も決めることが出来ます(現在Track6)。


やろうと思えば、ギターソロパターン1、パターン2や、伴奏のパターンを選ばせたりすることも可能です。コンプレッサーやリバーブなどのエフェクター類のかけ具合も実装可能ですが、これらの性能はブラウザ任せです。

 

欠点はというと、パートごとの音源をサーバーにアップする必要があるので、パートが増えると容量が増加することです。再生のためには、結局リスナーが音源をダウンロードすることになりますので、ダウンロードにかかる時間も考慮する必要があります、親切さを考慮するとせいぜい5~6パート分、mp3だとしても20メガバイトほどになるでしょうか。


あとは対応していないブラウザがまだあります、これはたぶん時間の問題。

 

とても素敵なWeb Audio API
当初、こういう使い方ってミキシング・マスタリングに対する冒涜なのでは?と思ったりしたのですが、なんかグールドのインタビューを読んでからすっきりしました。


ミキシングや録音技術には敬意を払いつつ、新しいテクノロジーを楽しみましょう。まだまだ取り組んでいる人が少ない分野だと思いますので、おすすめですよ。